こんにちは。
「大人になっても乳歯が残っている」という人や「永久歯が生えてこない」という人は意外に多いのではないでしょうか。
私もずっと永久歯が生えず、30歳近くまで左上の犬歯が乳歯でした。
結局、矯正治療を行うことにしましたが、「すぐに治療をすべきなのか」とか「とりあえず放置でも問題ないのか」など、実際に方針が決まるまで不安だった記憶があります。
歯科医には「この乳歯はいつダメになるかわからない」とも言われていましたので尚更です…。
今回は乳歯が残ってしまう原因やその影響、そしてどのような治療があるのかをまとめました。
治療を整理すると下の画像となります。『放置』という選択肢もあるので必ずしもすぐに何かをしなければいけないという訳ではありません。
大人乳歯の原因
そもそも、普通は乳歯の生えかわりが6歳から12歳ごろに起きますが、なぜ大人になっても乳歯が残るということが起きるのでしょうか。
この理由には『永久歯先天欠如』、『萌出経路の偏り』、『埋伏歯』が主な原因として挙げられます。
◾️永久歯先天欠如
『永久歯先天欠如』とは本来の永久歯28本に対して、本数が不足している状態のことを言います。
通常乳歯が抜ける際には、永久歯の成長に伴って乳歯の根を溶かす細胞が現れますが、永久歯が欠損している場所ではその細胞が存在しません。
そのため、乳歯をぐらつかせることができずに残ってしまうケースが出てきます。
この永久歯の欠損は10人に1人の割合で起きているという報告があり、決して珍しいものではありません。欠損が起きていたら乳歯が必ず残るという訳ではありませんが、原因の一つと言えます。
◾️萌出方向のズレ
萌出(ほうしゅつ)とは歯が生えることを言います。通常であれば永久歯は乳歯の下からまっすぐ出てきますが、人によっては出てくる方向が斜めになったりする場合があります。
この方向によってはと乳歯歯根の吸収が不十分となり乳歯が残りやすくなります。
上で紹介した永久歯先天欠如の場合は、乳歯歯根を溶かす細胞自体存在しない状態でしたが、たとえ細胞が作られていても、その位置によっては根を十分に溶かすことができません。
根が残ってしまうため、乳歯は抜け落ちずに残ってしまうことになります。
◾️埋伏歯
埋伏歯(まいふくし)とは顎の中に永久歯が埋まったまま出てこない状態を言います。完全に埋まっているものを『完全埋伏歯』、歯冠の一部が見えているものを『半埋伏歯』と呼びます。
この埋伏歯でも上の例と同じように乳歯歯根の吸収が不十分となり、乳歯が残ってしまう場合があります。
発生する歯の割合としては犬歯が高く、現代ではおよそ2パーセントの人が犬歯の埋伏歯を持っていると言われています。
埋伏歯の萌出方向によっては、すでに生えている健康な歯を傷つけてしまったり、歯並びや噛み合わせも悪くするので、早めの治療が必要なケースもあるようです。
乳歯による影響
生え変わり時期である12歳ごろを過ぎても乳歯が生えかわらないケースは多くありますが、大人になっても乳歯が残っているのは異常といえます。
乳歯が残っていると、口の中に様々な影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
まず大きく影響するのが歯並び、噛み合わせです。残っている乳歯が小さくなったり、または虫歯で抜け落ちた場合には生まれたスペースによって歯並びや噛み合わせも影響してくる可能性があります。
乳歯は、硬いエナメル質部分が永久歯の半分ほどしかありません。永久歯よりも弱いので、乳歯を使い続けていると削れたり虫歯になりやすくなります。場合によっては歯茎に膿がたまり歯茎に炎症が現れたりします。
また『二重歯列』という状態を引き起こす可能性があります。
乳歯があるにも関わらず、少しズレた位置に永久歯が生えてきた場合、乳歯と永久歯の両方が存在する二重歯列という状態が起きます。この状態になると噛み合わせに影響したり、虫歯や顎関節症を引き起こす場合があります。
処置の選択肢
乳歯が残る原因や影響を踏まえて処置の選択肢を考えてみます。
大きくは「永久歯が残っている」か「残っていない」で処置が分かれます。
永久歯が残っている
まずは永久歯が残っている場合です。乳歯がまだ存在している原因に、『萌出経路の偏り』と『埋伏歯』を紹介しましたが、それぞれの処置にはどんなものがあるのでしょうか。
まず、『萌出経路の偏り』によって永久歯がズレて生えてきいる場合ですが、これは矯正治療で元の位置に戻すことが可能です。永久歯の表面が見えている状態なので、そこに矯正器具を取り付けて徐々に移動させていきます。
矯正の種類には表側・裏側・マウスピースなど様々な方法がありますが、萌出位置によってはマウスピースでは対処しきれないかもしれません。
永久歯がズレて生えている→矯正治療
続いて、永久歯が埋まってしまっている『埋伏歯』の場合ですが、埋まっている永久歯を使うか使わないかによって治療が変わってきます。
永久歯を使う場合には、『埋まっている箇所を開窓して歯に器具を取り付け矯正で引っ張り出す』か、『永久歯を一度取り除いて移植する』かの選択肢があります。埋伏歯は骨に癒着して動かない場合もあるので、その際には移植という選択になります。
永久歯が埋まっている→矯正または移植
永久歯を使わない場合には、インプラント、ブリッジ、入れ歯などの人工物で乳歯の代わりとして補うという選択肢があります。ただし骨に埋め込むインプラントの場合、埋まっている永久歯が邪魔になることがあるので、処置の前に手術して取り除く必要ということもあり得ます。
永久歯はあるが使わない→人工物で補綴
永久歯がない
もともと永久歯が存在しない『先天欠損』の場合はどうでしょうか。
永久歯が足りていない分、人工物で補う必要があります。今生えている乳歯が無くなれば大きな隙間ができますので、それを埋めるためにインプラント等で穴埋めします。
場合によっては人工物無しで、矯正によって歯全体を調整することも可能かもしれません。
永久歯がない→人工物で補綴
治療しない
乳歯が残っていて、歯茎等に異常が見られない場合には『放置』という選択肢もあります。極力乳歯を使い続け、タイミングを見計らって治療を行うというやり方です。
実際に私は一度放置し、およそ10年後の乳歯が折れたタイミングで治療を開始しました。
乳歯は虫歯や歯並び悪化の原因にもなりかねないので、何か異常があったら早めに診察を受けた方がいいかもしれません。
また、いつまでも乳歯を使い続けられるとは限らないので、欠けた時や折れた時の治療方法について予め検討が必要です。
治療しない→乳歯を大切に使っていく
結局どうすべき?
選択肢が複数あるとどうしたらいいのか分からなくなることもあると思います。
基本的には、歯医者に足を運んで意見を聞くことが重要かと思いますが、その際には一般歯科、矯正歯科、口腔外科など様々な先生の意見を聞いてみることをおすすめします。先生によっても意見は異なると思いますし、徐々にそれぞれ処置のメリット・デメリットが見えてくるはずです。
また、あくまで私個人の意見ですが、処置に関しては使えるものを使うべきかなと思います。乳歯が残っているなら使い続け、永久歯があるなら矯正によって本来の位置に動かすという具合です。
人工物で歯を補う方法は矯正に比べて短期間で治療を終えることができますが、一度永久歯を除去してしまったら二度と自身の歯は生えてきません。まずは自分の歯を優先して使い、それで問題が出たら人工物にするというやり方がいいのではないでしょうか。
まとめ
大人の乳歯に関して、原因や治療の選択肢をまとめました。
乳歯が残っている原因は永久歯に異常が起きている場合が多く、その例としては欠損や埋伏歯が挙げられます。
治療はいくつかの選択肢がありますが、乳歯や口の状態に問題がなければ『放置』という選択も可能です。
ただ、乳歯を使い続けていると歯並びや噛み合わせに影響したり、歯茎が炎症を起こしたりしますので、異常が現れたら早めに診察を受けましょう。
処置の緊急性や治療方法についても検査の際に歯科医から意見がもらえるはずです。
何かとやっかいな大人乳歯ですが、状態をよく観察しながら治療に向き合っていきたいですね。
下のリンクは私の矯正と埋伏歯について書いている記事です。よかったら読んでみてください。